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臨床薬理学会 近畿地方会で考える、臨床試験の未来図

2019-03-15 - < 1 min read
臨床薬理学会 近畿地方会で考える、臨床試験の未来図

第3回日本臨床薬理学会 近畿地方会 -近畿のさらなる飛躍を目指して!-」が10月27日に兵庫医科大学で開催されました。行政・アカデミア・製薬企業など著名な先生方が講演される中、最後の特別講演では「モバイルヘルス・バーチャル臨床試験が切り拓く医薬品開発」として弊社の稲留由美が講演しました。

 本学会は「臨床研究法施行から半年を経て」と題したシンポジウム、それに続いて開催された教育セミナー「統計的素養に磨きをかける!」そして特別講演の三部で構成されました。今年4月にオープンしたばかりの「教育研究棟」で、行政・アカデミア・製薬企業・認定臨床研究審査委員会の立場から、活発な意見交換が行われました。

 臨床研究法は今年4月に施行されましたが、本法案が設立した背景は皆さんもよくご存知だと思います。約5年前に製薬企業とアカデミアとの癒着が相次いで発覚し、利益相反(COI)について社会的な関心が高まる中で成立しました。

 シンポジウムではまず、厚生労働省からこれまで現場から出てきたQ&A解説を軸に、同法各規定の内容や趣旨の説明がありました。それに対してアカデミアからは、経過措置は平成31年3月末までと残り半年しかない状況で、臨床研究の基本用語の定義が変わったり、人員が不足していたり、統一書式の見直しなど大混乱している悲痛な声が聞かれました。とある国立大学の先生からは、臨床研究法が施行されてから臨床研究が激減しており、今まで150本あった試験が40本以下になっているという発言もありました。

 一方、製薬企業側からは、どこまでアカデミアに対して役務提供をしていいのか線引きをはっきりしてもらいたいというような要望が出たものの、もともとコンプライアンスを厳しくしていたこともあり、大きな混乱はないようでした。製薬業界でもGCP導入時に一定の混乱があったようですが、定着していくと透明性を高めつつ効率性を改善できることになり得るという意見も出ていました。

  今までマーケティング的な立ち位置で行われていた臨床研究もあったかと思いますが、今後は治験の要件に近い基準で実施されていくのだろうと感じました。メディデータの提供するプラットフォームは多くの治験でご利用いただいておりますが、欧米を中心に臨床研究でもご活用いただいています。さらなる効率化が求められる臨床研究でも今後お役に立てる機会が増えるのではないかと思いました。

 さて、メディデータによる特別講演はPatient Journeyという、未病から診断、治療、予後、という流れを、どのようにモバイル・ヘルステクノロジーが支えるかという視点で話が展開されました。スマートフォン、タブレット、ウェアラブルデバイスなどの技術を適応して、患者さんの理解を促進し、エンゲージメントを高めていくことで、患者中心の臨床試験を実施していくことができます。更には、探索的に新しいエンドポイントで臨床データを取りに行くことには、医療現場からも期待したい!との声がありました。講演では、他国での先行事例も紹介しつつ、日本で想定される課題も検討しました。今後は、産・官・学で協力してデジタル変革を推進していくことが求められそうです。

 日々の生活やあらゆる産業がデジタル化によって大きな変化の時を迎えています。この波は医療現場にも押し寄せているようで、会場から質問も多数寄せられ、医療関係者にとってもテクノロジーを活用した新しい臨床試験のあり方への関心がとても高いと感じました。iPhoneが2008年に日本で発売されて約10年が経過しました。当時、今のようにモバイル機器やデジタル化が進んだ社会になることは誰も想像していなかったと思います。次の10年ではバーチャル臨床試験をさらに飛び越えて、想像もつかない新しい世界観が生まれていると考えると、なんだかワクワクしてきませんか。

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