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eSource、なぜいいの?

2020-02-26 - < 1 min read
eSource、なぜいいの?

臨床試験のグローバル化・多様化が加速しています。先日、シミック社、MICIN社の開催するバーチャルトライアルのセミナーにもメディデータは協力させていただきましたが、mHealthやIoT等のモバイルテクノロジーの発達や使用が広がる中、臨床試験においてもこれら新しい技術の活用が進んでいます。その際ポイントとなるeSource。話題をよく耳にするものの、その定義や意味合いなどが様々な捉え方をされているようです。そこで今回は臨床試験のデータマネージメントの研究に従事されている東京大学大学院医学系研究科臨床試験データ管理学講座の宮路天平 特任助教にeSourceについてお話を伺い、解説していただきました。

臨床試験におけるeSourceとはどういったものが含まれるのでしょうか。

eSourceとは、臨床研究におけるデータ収集の際に、電子的に記録された原データ(Source data)を直接収集する手法を指す用語として、使われております。eSourceにはいくつかのタイプがありTranscelerate[1]による分類では、次の4つに分けられております。1)EHR/EMR、2)Devices&App、3)Non-CRFs、4)Direct Data Capture(DDC)

  1. EHR/EMRは、いわゆる「電子カルテとElectronic Data Capture(EDC)連携」の手法を指しており、診療録とEDCをネットワークで繋ぎ、臨床研究で収集が必要な項目について、診療録のデータをEDCに転送させる仕組みとなります。
  2. Devices&Appは、患者から報告もしくは生成されるデータの収集方法を指しており、健康関連QOL、症状記録、服薬アドヒアランスなどの患者報告アウトカム(Patient-reported Outcome:PRO)を電子的に収集するePROなどのシステムがこれにあたります。またPRO以外にも、ウェアラブルデバイスやセンサー付きのデバイス(体重計や体温計など)から生成されたデータの収集も進んでおります。
  3. Non-CRFsは、血液検査値、画像、ECGデータなどを医療機関内の中央検査センターや外部ベンダーの臨床検査センターから電子媒体で受け取る仕組みとなります。
  4. DDCは、Devices&Appが患者からのデータ収集であるの対して、医療者が電子的に記録、評価したデータを直接収集する仕組みがこれにあたります。

従来から使われてきたEDC4つ目のカテゴリーに含まれますね。
Device & Appに含まれるePROやウェアラブルセンサー付きデバイスなどに、最近新たに注目が集まっています。先生も携われているBalast試験では、ePROやセンサー付き体重計が使われていますがこれらeSourceを活用することによる利点はどのようなものですか。また、課題はどのようなものでしょうか。

これまでは、医療機関に来院して検査や評価をすることが一般的でした。ePROやウェアラブルデバイスの導入により、医療機関に来院せずとも、自宅や日常生活の中で、評価や測定ができるようになり、患者の来院の負担を減らすという点でとても良い事だと思います。また、健康関連QOLや満足度などの患者の主観的な評価が評価項目として取り入れられることは、臨床研究を患者中心に推進するという点でよいことだと思います。またこれまで紙媒体での運用では把握できなかった回答時間などは、電子的に収集する事でタイムログが残り、遠隔からでもモニタリングする事が可能になります。患者報告アウトカムについては、より信頼性の高いデータが集められるとして、データの品質の面からも期待されております。

EMR/EHRとの連携やDDCの活用についてはどのようにお考えですか。

eSourceでは電子的にネットワークを介して直接原データを収集するので、まず、電子データ処理システムに対しての完全性、正確性、信頼性が要求されます。通常、電子カルテは、診療録にある患者情報の外部への流出を防ぐために、外部ネットワークとの接続を制限するなど、厳しいセキュリティーポリシーのもと運用されております。そのような中で、電子カルテとEDC連携の場合には、中間サーバーなどを設置するなど、セキュリティー面に十分に配慮しつつ、連携の枠組みを構築する事が重要となります。

また、ePROやDDCの場合は、日常臨床の中で電子的に評価や記録を行うため、実際の業務フローの中での当該手法の運用の実施可能性を十分に確認して導入する必要があります。

eSource活用において今後ポイントになること、注目していることはどのようなことでしょうか?あるいはテクノロジーへの期待値はどのようなものでしょうか?

eSourceを活用する事で、医療機関による症例報告データのEDCへの転記作業やスポンサーによるSource Data Verification (SDV)実施にかかる時間や費用の削減が期待されます。eSourceの導入のポイントとしては、医療機関における評価や記録のプロセスや患者による技術の受け入れについて、対応が可能なのか実施可能性を事前に確認する必要があります。臨床研究のデザイン、データ収集項目、対象集団、試験の規模、実施体制などを考慮して、導入を検討する必要があります。

[1] Transcelerate Biopharmはより効率的で効果的な臨床開発や臨床試験の実施を目指してグローバル大手製薬企業が中心となって共同設立した非営利団体

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