臨床試験においてAIはどのように活用されているのか? 2026年の5つの主要なインサイト
臨床試験におけるAIはもはや将来への賭けではなく、すでに運用レベルでの現実となっています。
製薬企業、バイオテクノロジー企業、およびCROの臨床運用担当シニアリーダーを対象にEverest Groupと共同で実施された「第2回 年次 臨床試験におけるAI活用現状調査」では移行期の真っただ中にある業界の姿を捉えています。回答が得られた企業の3分の1は、一部または大半の試験でAIをすでに導入しており、残りの3分の2も積極的な検討やパイロット運用の段階にあります。82%の企業で臨床試験運用でのAI利用期間が18か月以下であることを踏まえると、この波は初期段階にありますが、非常に速いスピードで進んでいます。
予算は増加傾向にあり、アーリーアダプターは測定可能な形で大きく先行しています。競争上の優位性を確立するための猶予期間は狭まっています。
すべての臨床試験組織が注目すべき5つの主要なインサイトをここに紹介します。
1. 回答した92%の組織が今後12〜24か月以内にAI関連支出の拡大を計画
大多数の組織が今後1〜2年でAI投資の拡大を計画しているという事実は、紛れもないシグナルを示しています。それは、AIがイノベーションのための実験段階を卒業し、戦略的な予算項目へと格上げされたということです。臨床運用のリーダーたちは、「AIに投資すべきか?」ではなく、「どれほどの速さで、どれほど深く、そしてどこから始めるべきか?」を問いかけています。
予想される予算増額は、リターンに対する楽観的な見通しと結びついています。回答者の82%が2〜3倍のROIを期待しており、その大半が1〜2年以内にそのリターンが実現すると見込んでいます。
現在、すでにAIを導入済みの先行企業とそれ以外の企業を分断しているのは、予算の有無ではありません。勝ち組となっている組織は、その投資を有意義に実行し、効果的にスケールさせるために必要な基盤をすでに構築しているのです。
2. 大量処理かつルールに基づくワークフローにおいて、AIは期待以上の成果を発揮
全体として見ると、これまでにAIが「期待通り、または期待以上」の成果を上げたと答えた回答者はわずか29%にとどまります。このギャップは、初期のAIロードマップが野心的であったことと、複数のシステムが絡み合う複雑な展開が成熟するまでに時間を要することを反映しています。しかし、対象を絞った高頻度のワークフローにおいては、その効果は明白です。46.5%がタスクやワークフローの自動化において期待以上の改善を報告しています。データクリーニング(40.5%)とクエリ解決(36.5%)がそれに僅差で続いています。
これらは当然ながら、最初に得られる成果です。これらは測定可能であり、ステークホルダーに対して説明がつきやすく、進行中の試験を妨げることなく段階的に導入できます。同様の指標は、アーリーアダプターにおいてはさらに高い割合で報告されており、それぞれ62.2%、45.9%、48.6%に達しています。
現在、期待以上の成果を出している組織は、今日の証明された成果を原資にして、今後の野心的な取り組みへと投資しています。実証されたユースケースが積み重なるごとに、組織内の信頼と予算獲得の正当性が高まり、より複雑な臨床アプリケーションへのAI拡大へとつながっていきます。
3. 18ヶ月以上のAI導入経験を持つアーリーアダプターは、ほぼすべてのKPIで高い成果を報告
これは、AI導入に遅れを取っている企業が知っておくべき最も重要な統計データです。AIの導入経験が18か月以上の組織は、ほぼすべてのパフォーマンス指標において、他の組織よりも高い頻度で「期待以上」の成果を報告しました。この格差は初期の容易な成果にとどまらず、業界全体が苦戦している「変革が難しい成果」にまで及んでいます。
より難易度の高い指標の中には、試験期間の短縮やプロトコル逸脱の減少が含まれます。業界全体ではこれらの領域で期待以上の成果を報告した割合がそれぞれわずか15%と26.5%にとどまるのに対し、早期導入企業ではその数値が29.7%と40.5%にまで跳ね上がります。
ここから得られるメッセージは明確です。臨床試験におけるAIの価値は時間とともに複利的に増大し、最も重要な成果ほど実現に時間がかかるということです。この種のKPIは、単一のパイロット運用や単発の導入で改善するものではありません。AIが相互に接続された複数のワークフローに組み込まれ、それぞれの改善が相乗効果を生み出す必要があります。
レポートの完全版では、8つの明確なKPIにおけるパフォーマンスを分析していますが、その格差は目を見張るものがあります。早く始めることは重要ですが、それは企業全体での展開を可能にする基盤と組み合わされて初めて意味を持ちます。
4. 約90%がプロトコル設計および最適化にAIを導入中、または導入を計画中
現在、最も一般的な実運用ユースケースは「データの統合と標準化」(69.5%が現在AIを使用中)ですが、臨床試験におけるAIの次なる急成長のユースケースとして「プロトコル設計および最適化」が浮上しています。58%が現在この方法でAIを活用しており、さらに32.5%が導入を計画しています。つまり、90.5%の組織がこの領域を今後のAIの重要なユースケースと捉えているということです。.
このワークフローに注目が集まるのは合理的といえます。設計されたプロトコルが実態に即していない場合、試験が失敗に終わる最も一般的な原因の一つとなります。試験を成功に導くために初期段階で設計されたプロトコルは改訂を余儀なくされ、それによって施設登録の遅延や、コスト増大を招きます。AIは、過去の臨床試験のパフォーマンスを分析し、高い負担を与えたりリスクをもたらしたりする要素にフラグを立て、患者登録がまだ行われないうちにリアルワールドデータ(RWD)と照らし合わせて潜在的な結果をモデリングすることで、この課題に対処します。
プロトコル逸脱の減少はこのユースケースから直接得られるメリットです。前述した、この成果を認識する上での「アーリーアダプター」と「業界全体」との間のギャップは、プロトコルの最適化と設計が、本当の効果を実感するために複数の展開と企業全体でのスケールを必要とする多くのワークフローの一つであることを裏付けています。より早く動き出し適切な基盤を構築した企業が、遅れをとっている競合他社よりも高い頻度で期待以上の成果を上げているのは当然の結果といってよいでしょう。
5. 限りある時間:AIの格差が構造的なものになるまで18〜24か月の猶予期間
静観することの代償は現実に大きく影響しています。組織の準備が整っていない場合その状況はさらに悪化します。レポートでは、AIを活用が進んでいる企業とその他との間の格差が「構造的」なものになるまでに、18〜24か月の期間があると予測しています。この格差は、単に新しいテクノロジーを採用するだけでは埋めることが困難なものです。
AIが価値をもたらしていることに疑いの余地はありませんが、AIのジャーニーを深く進めている組織は、時間の経過とともに蓄積される強力な優位性を築いています。これらの能力は複利的に積み重なるため、単にピカピカの新しいツールを購入するだけでは再現できません。
洗練されたデータインフラ、組み込まれたガバナンスプロセス、部門を超えたAIリテラシー、そしてAIを段階的に複雑なワークフローへと押し進める自信を持ったチームを擁する組織こそが、誰よりもAIから多くの成果を引き出しています。
積極的なパイロットフェーズにある組織にとって、窓口は開いていますが徐々に狭まっています。今まさに着手し始める組織もこの複利の段階に到達することはできますが、開始が遅れれば遅れるほど、先行く企業からの遅れは致命的なものになります。
これらの統計データは、2026年現在における臨床試験でのAI採用トレンドと、AIがもたらしている価値の縮図です。採用トレンド、バーチャルツインへの移行、そして経験がどれほど重要かを正確に定量化した早期導入企業の完全なKPI分析についてさらに深く知りたい方は、ぜひ第2回年次レポート「The State of AI in Clinical Trials (臨床試験におけるAI活用の現状)」をご覧ください。
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