超高齢社会で重要性を増すCNS臨床試験

約 3 分で読めます
2026-11-03
超高齢社会で重要性を増すCNS臨床試験

この記事はCogstate社による寄稿記事です。

執筆者

佐藤 至博士
Cogstate Senior Manager, Clinical Trial Operations, APAC。APAC地域における臨床試験オペレーションを担当し、認知機能評価を含む臨床試験の実施において、製薬企業や研究機関との連携およびプロジェクトマネジメントに携わっています。

パム・ヴェントラ博士
CogstateのChief Science Officer(最高科学責任者)およびYale Child Study Center准教授。臨床心理学の専門家として、臨床試験における評価項目の選定、評価者トレーニング、モニタリング、統計解析など、Cogstateの科学戦略をリードしています。

坂本麻衣子教授
佐賀大学医学部附属地域医療科学教育研究センター教授。中枢神経(CNS)系疾患からくる認知機能障害の早期発見に向けた検査の研究・開発や医学教育に取り組んでいます。米国にて、臨床心理学(神経心理学専攻)で博士号を取得し、臨床心理士・臨床神経心理士として臨床・教育・研究に従事した経験を有します。

 

治療開発を支える「評価品質」という視点

日本の高齢化率は世界でもトップクラスで、今後も高水準が続くと見込まれています。これにより、アルツハイマー病をはじめとする認知症、パーキンソン病などの神経変性疾患や脳血管障害等による社会的負担も増えています。これらは「中枢神経系(Central Nervous System:以下CNS)疾患」の一部です。また、近年では若年層にも多いとされるうつ病や統合失調症などの精神疾患もCNS疾患の一部に分類されます。

こうした神経疾患は、患者さんご本人だけでなく、家族や介護者、医療・介護制度にも長期的な影響を及ぼします。

CNS領域では近年、新薬開発が着実に進んでおり、アルツハイマー病では疾患修飾薬が実用化され、これまで治療選択肢が限られていた疾患にも新たな可能性が生まれています。
一方で、新しい治療薬を患者さんへ届けるには、臨床試験で有効性と安全性を適切に示す必要があり、この臨床試験の実施には多くの課題が存在しています。

CNS試験では必要なデータを収集することに加え、症状の変化をどれだけ客観的に正確に捉えられるかが試験結果を左右します。

 

CNS臨床試験に特有の「評価」の難しさ

CNS臨床試験の難しさの一つは、治療効果の評価に人の判断が関与することです。認知機能、精神症状、行動、日常生活機能などを測る臨床評価尺度では、患者さんや介護者へのインタビュー、観察、臨床的判断が必要になります。検査機器による測定とは異なり、評価者が質問をどのように補足するか、得られた情報をどの評価基準に当てはめるかによって、スコアが変わることがあります。

評価者の経験、疾患への理解、トレーニングの程度が異なれば、同じ尺度を使っていても結果にばらつきが生じます。多数の国、施設、評価者が参加するグローバル試験では、言語や医療慣行などの違いも加わるため、評価の一貫性を保つことはさらに難しくなります。

 

評価者の確保と標準化も重要な課題

疾患と評価尺度を理解し、必要なトレーニングを修了した評価者を各施設で確保することも容易ではありません。施設によってCNS試験の経験や尺度への習熟度が異なるうえ、長期試験では担当者の交代も起こり得ます。試験開始時の選定と認定だけで終わらせず、実施期間を通じて評価者の適格性と評価の一貫性を維持する仕組みが求められます。

 

「評価品質」を継続的に支える仕組み

CNS疾患においては、尺度を導入するだけでは評価の一貫性維持としては不十分です。評価者への標準化トレーニングと認定に加え、評価データやインタビューの継続的なレビュー、施設間・評価者間の傾向の確認、必要に応じたフィードバックや再トレーニングが必要になります。特に臨床評価尺度が主要な評価項目となるアルツハイマー病やパーキンソン病などの試験では、この品質管理が試験結果の解釈に直接関わってきす。

 

テクノロジーとCNS評価の専門性を組み合わせる

デジタル技術の発展により、評価品質を管理する方法も変わりつつあります。評価者のトレーニングや検査実施の認定をオンラインで管理し、試験中に評価データをレビューして傾向を分析することで、特定の施設や評価者に生じているスコアの偏りや評価基準からの逸脱を、より早い段階で把握できる可能性があります。

ただ、システムを導入するだけで評価品質が保証されるわけではありません。検出された傾向をCNS評価の専門家が臨床的に解釈し、必要な対応につなげることが重要です。データを統合的に管理する基盤と、評価科学および評価者管理の専門性が連携して初めて、リスクに応じた品質管理が機能します。つまり、CNS疾患の臨床試験では、システム、評価における専門的知識、トレーニングのすべてが揃うことが、臨床試験の成功のカギと言えます。

この実現を目指し、協業しているのがMedidataとCogstateです。私たちは2024年に戦略的パートナーシップを提携し、日本でも2026年6月より協業を開始しています。
Medidataの臨床試験プラットフォームとデータ活用基盤に、CogstateがCNS領域で培ってきた臨床評価、評価者トレーニング、認定、品質管理の専門性を組み合わせることで、試験実施中の評価状況をより体系的に把握し、一貫性の高い臨床評価データの取得を支援できます。その目的は業務を効率化することだけではありません。評価のばらつきを抑え、治療による変化をより正確に捉えられるデータを得ることにあります。

両社のパートナーシップにより、試験設計の段階からスポンサーを支援することでCNS疾患の臨床試験をより迅速に進め、一日でも早く一人でも多くの患者さんを救うことを目指しています。

MedidataとCogstateのパートナーシップについてはこちらをご覧ください。

Copy Article Link

Subscribe to Our Blog

Receive the latest insights on clinical innovation, healthcare technology, and more.

Contact Us

Ready to transform your clinical trials? Get in touch with us today to get started.
超高齢社会で重要性を増すCNS臨床試験