David Benshoof Klein氏、処方用デジタル治療について語る

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2025-10-16
David Benshoof Klein氏、処方用デジタル治療について語る

処方用デジタル治療:Click TherapeuticsのDavid Benshoof Klein氏が語る、ソフトウェアが切り拓くヘルスケアの未来

Clinical Minds「Innovator Insights Corner」へようこそ!ここでは、Medidataのポッドキャスト『From Dreamers to Disruptors』に登場したゲストたちが語る、ライフサイエンス分野のイノベーションにまつわる興味深いストーリー、ユニークな視点、そして未来への予測をご紹介していきます。医療・製薬業界を変革するビジョナリーたちの“声”を、ぜひお楽しみください。


スマートフォンの普及により、私たちはいま、デジタルで高度につながった世界に暮らしています。こうした状況を活かし、処方用デジタル治療は、規制当局の承認を受けたオンラインやアプリを活用して従来の治療をサポートし、患者さんに新たな治療と回復の選択肢を提供しようとしています。

David Benshoof Klein氏は、デジタル治療およびSoftware-Enhanced(ソフトウェア強化型)治療のリーディングカンパニーのひとつである Click Therapeutics のCEOです。同社は片頭痛、うつ病、その他多くの疾患に対する治療開発を先駆的に進めており、製薬企業と患者の双方に大きな変革をもたらす、この急速に進化するヘルスケア領域について、Klein氏は深い知見を持っています。

デジタル治療による行動変容

Click Therapeutics の原点には、スマートフォンの急速な普及があります。Klein氏は、スマートフォンがいかに生活に欠かせない存在となり、人々の行動に大規模な変化をもたらしているかにいち早く注目しました。

「当時、私はコーネル大学の臨床神経精神医学部門の責任者と一緒に仕事をしていました。そこで私たちは、スマートフォンが行動を変えるだけでなく、人々の脳の回路そのものを組み替えていると考えたのです。そして、そこで思ったのが、『もしこの行動・認知変容の力を疾患に対して活用できれば、それは薬と同等、あるいはそれ以上の効果を発揮できるかもしれない。さらに薬と組み合わせることで、より安全で効果的な治療が実現できるのではないか』ということでした。」と、Klein氏は メディデータ CEO の Anthony Costelloに語ります。

私たちの日々の行動は、健康やウェルビーイングに大きな影響を与えます。デジタル治療は、睡眠習慣や運動量といった行動を記録しながら、患者さんがより良い行動を身につけられるようアドバイスや実践の枠組みを示します。それにより、別の薬物療法と併用したり、あるいはそれ自体を単独の治療として活用したりすることで、疾患の改善をサポートします。

「例えば片頭痛を例に挙げると、私たちは睡眠パターンを整えることを支援できます。ある日は夜9時に寝て、次の日は深夜1時に寝る——このように寝る時間がバラバラだと、症状が悪化してしまうことがあるのです。」

– David Benshoof Klein

処方用デジタル治療(PDT)は、疾患の症状を悪化させる行動パターンを特定することができます。「例えば、午後6時にコーヒーを飲むことが症状の原因のひとつになっている場合、プログラムがそれを知らせてくれるのです」とKlein氏は説明します。「そのパターンをすぐに特定し、“それがあなたの症状悪化に関わっている”とメッセージで伝えます。もし関係がなければ、通知は来ません。」

さらに彼は続けます。「私たちは単に、行動変容のメカニズムだけで疾患を治療しようとしているわけではありません。特許取得済み/申請中の神経調整(neuromodulatory)タスクと行動療法の仕組みを組み合わせ、脳内の特定の神経回路にアプローチしています。これは薬の影響や疾患そのものによって機能が低下していると考えられる部位です。」Click Therapeutics は最近、乳がん患者の疼痛・疲労・不安・抑うつの改善において大きな進展を遂げました。デジタル治療による行動変容が、さまざまな疾患を抱える患者さんにもたらす可能性はまだ始まったばかりなのです。

デジタル治療が生み出すデータと新たな価値

患者さんが普段使っているデバイスを通じて直接つながることで、デジタル治療は、患者さんと製薬企業との関係性を大きく変える可能性があります。定期的(あるいは不定期)に医師の診察や薬局に行くのとは異なり、デジタル治療は、患者さんと医療のエコシステムをつなぐ最も頻度の高い接点になり得るのです。

日々のやり取りはアプリ上で行われ、そこから得られるリアルワールドデータが、開発企業には重要な情報を、そしてユーザーには価値ある洞察をもたらします。

これにより製薬企業には、Klein氏が表現するところの「単なる“薬をつくる会社”という印象から、包括的なヘルスケアソリューションを提供する存在へと評価を転換するチャンス」が生まれます。彼はさらに、患者が自分のデバイスを通じてバイオメトリクス(生体データ)を追跡することへの受容がまさに転換点にあり、製薬業界はこの機会を積極的につかむ必要があると指摘します。「そうしなければ、ある日突然、患者さんのGLP治療がうまくいっているかどうかをNikeは知っているのに、製薬企業は知らない——なんてことになりかねません。それでは成り立ちませんよね。」

「そこには、いわば患者中心のヘルスケア体験と呼べる、これから広がっていく大きな世界が存在しています。その“体験”を誰が主導するのか——多くの企業がその座を狙うことになるでしょう。」

– Anthony Costello

Klein氏は、製薬企業と一般の人々との関係が、パンデミック時に見られたような変化を迎えると見ています。突然、人々は自分が接種するワクチンがどこで作られているのかを意識し、これまでなかったような形でメーカーごとに意見や印象を持つようになりました。

「私たちはまさにその方向に向かっているのだと思います」と、Klein氏は語ります。「人々は、『私はX社のGLPを使っている。とても素晴らしい体験ができる』というようになるでしょう。私は、企業にはこの変化を積極的に受け入れてほしいと思っています。患者さんはブランドとそこから得られる体験を知るようになり、より使いやすく、患者中心の体験を提供する治療を選びたいと考えるようになるはずです。」

デジタル治療をめぐる規制と承認の枠組み

デジタル治療は、一般的なヘルスケアアプリとは一線を画します。他の治療法と同様に、患者へ処方される前に厳格な臨床試験と規制当局の承認を経て、その有効性と安全性が証明されなければなりません。

また、デジタル治療に特化した規制やガイダンスが各国で整備されつつあることは、政府がこの領域の拡大を認識しており、将来的に公衆衛生の重要な役割を担うと見ていることの表れです。

2023年末、FDA(米国食品医薬品局)は処方薬使用関連ソフトウェアに関する規制上の考慮事項(PDURS)を公表しました。Klein氏は、PDURSによって次の点が明確になったと述べています:

「もしソフトウェアが医療機器に該当し、その薬剤に追加の臨床的に有意なベネフィットをもたらすのであれば、その効果を薬剤ラベル(添付文書)に直接記載できる」

新しい治療法に対する規制監督のあり方は、国によって大きく異なることがあります。しかしKlein氏は、PDURSは米国の法律であるものの、「こうした医療機器に関する規制は、通常グローバルに調和していくものです。すでに、いくつかの国ではPDURSを受け入れる動きが見られています」と述べています。

ヨーロッパでは、デジタル治療の導入が急速に進んでいます。そして国際的な規制の調和が進むにつれて、こうした技術が製薬企業にもたらす価値は、今後ますます大きくなっていくでしょう。処方用デジタル治療にいち早く取り組むことができた企業こそが、このチャンスを最大限に活かす立場を手に入れ、貴重なデータを獲得しながら、
世界中の患者の人生を変えるような新しい治療を生み出していくことができるのです。


David Benshoof Klein氏とAnthony Costelloの対談の全編は、『From Dreamers to Disruptors』エピソード5でお聴きいただけます。デジタル治療の設計におけるポイント、そして メディデータと Click Therapeutics が連携してこれらの新しい技術をパートナー企業につないでいる取り組みについて、
ぜひ深く知ってみてください。

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