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こうして生まれた!国内臨床試験の「フラストレーション」を解消するtsClinical Solution(前編)

2021-07-27 - < 1 min read
こうして生まれた!国内臨床試験の「フラストレーション」を解消するtsClinical Solution(前編)

みなさまこんにちは、メディデータ マーケティング部です。梅雨明けの余韻も短く気づけば連日の30度超えに、リモートワークでなまった体が悲鳴をあげる日々です。4度目の緊急事態宣言にうんざりしつつもリモートワークをされている方、この暑い中でもご出社にて業務を続けられている方、さまざまかと思いますが、ぜひ少しの休憩や業務の合間に息抜きがてら本ブログをお楽しみいただけたらと思います。


さて、今年に入り、2回にわたってご紹介した富士通株式会社のtsClinical Solution(「富士通株式会社 Rave EDCと連携する “tsClinical for SDTM Automation“を提供開始」、「富士通株式会社”tsClinical eSource liaison”がもたらす効率化」)ですが、製品の特徴や魅力をより深くみなさまに知っていただくため、今回は開発の背景や特徴について富士通株式会社の海老様、宮崎様にお話を伺いました。前編・後編にわけてそのインタビューをご紹介してまいります。

 

<インタビュイープロフィール>

富士通株式会社
Consumer Products & Service事業本部 ヘルスケア事業部
海老 邦仁 様

2010年よりCDISC Japan User Groupに携わっており、 CDISC公式トレーナー(Define-XML)として、CDISCに関する幅広い業務に従事。現在は、tsClinical MetadataおよびtsClinical for SDTM Automaionの企画・開発を担当。

 

富士通株式会社
FAEユニット ヘルスケアビジネス事業部
宮崎 基彰 様

1998年よりヘルスケア分野(医療・医薬)におけるシステム開発および導入業務に従事。
現在は、マネージャーとしてtsClinical eSource liaisonや医療機関向け治験管理システムのビジネス推進を担当。

 

規制当局や業界ネットワークから生まれたSDTM Automation

メディデータ(以下、「メ」):今回2製品リリースされていますが、まずはtsClinical for SDTM Automationについて、教えてください。PMDAに提出する薬事承認申請データにはSDTM形式で作成された試験データを提出することが義務化されたことに伴って今回の製品がリリースされていると思いますが、SDTMに関する製品開発には以前から照準が当たっていたのでしょうか?

富士通 海老様(以下、「海老」):はい。富士通は医薬品開発の様々なシステムをつなげて価値を生み出すというビジョンがあるので、臨床データを交換する国際標準であるCDISCに以前から注力していました。2014年には規制当局に提出するDefine-XMLを作成する無償ツールである「tsClinical Define.xml Generator」を、2015年にはCDISC標準や各試験のデータ仕様を管理するクラウドサービスである「tsClinical Metadata」をリリースしています。それらの製品を下地にして、SDTMデータの自動作成にスコープを広げたのが「tsClinical for SDTM Automation(以下SDTM Automation)」です。

:CDISCに以前から注力されていらっしゃるとのことですが、これに関連したお客様からのニーズを実際に感じた出来事などはありますでしょうか?

海老:何か1つの出来事があった訳では無く、比較的早い時期からCDISCに取り組んでいた事で、課題を深く認識できたのではないかと思います。CDISC義務化前は多くの企業が手探りだったので正直な情報交換が多く、また富士通が規制当局のシステム構築を支援するなど存在感があったので、業界内の方々と率直な意見交換が出来ていた事が製品に活きていると思います。

:規制当局との関係性や業界における深いお客様とのネットワーキングからの産物ですね。

海老:一つには、ソースデータを選ぶシステムにはしない、ということです。SDTM AutomationとRave EDCが上手く連携できるという事と少し矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、例えばCRFデザインを制限しないということです。メガファーマの中には、自社のCRF標準を厳密に適用する事で、SDTMデータの自動作成を実現している事例があるようですが、そのモデルは多くの企業には適用しづらいと考えています。

また、IT的な視点では、汎用的なETLツール(データ変換・加工ツール)とは異なるデザインにするということです。ETLツールではGUIでデータ間のマッピングを定義し変換ロジックを記述しますが、ソースデータからSDTMへの変換は、そういったGUIでは記述しきれない複雑度を伴うので、独自のデザインを考案する事にしました。

:ソースを限定しないことでより柔軟に使えるシステムにし、かつ、複雑性を排除してあらゆる企業に受け入れられやすい仕様にしているということなのですね。独自デザインができるというのは、やはり多岐にわたるITソリューションを開発されてきた富士通様ならではの開発力ですね。

海老:そうですね。 やはり、ソースデータの多様性にどのように対応するか、そして多様なソースデータの変換をいかにシンプルにデザインできるか、という点です。EDC、ePRO、デバイス等、様々な種類のソースデータがあり、臨床試験の多様性は増える方向にありますので、「ソースデータは表形式で表現できる」ことと「縦型および横型データ(※1)がある」ことのみ前提条件としました。

また、ソースデータからSDTMへの変換をシンプル化するために、SDTMデータセットの種類を「Trial Design」、「ソースデータから作成するデータセット」、「導出するデータセット」の3種類に分類し、「ソースデータから作成するデータセット」については、ソースデータから4種のマッピング(Dataset Mapping, Variable Mapping, Codelist Mapping, Concept Mapping)を行う事で作成できるようにしました。このモデルに辿り着くまで検討に相当な時間を要しましたが、優れたモデルが出来たのではと思っています。

:なるほど。実業務の理解があるからこそのモデルですね。 他にはどういった特徴がありますか?

海老:SDTM自動作成というジャンル自体が特徴的だとは思いますが、なかでも特徴的な機能はAI技術を活用した「AutoMap」です。「AutoMap」はAI技術の1つである自然言語処理とSDTMのビジネスルールを組合せることで、前述の4種のマッピングを自動的に生成します。当社内の複数の模擬試験では50~70%程度が自動的に作成できており、まだまだ向上できる可能性があります。

他にも特徴的な機能はたくさんありますが、無償公開ツールも提供していることに触れたいと思います。「tsClinical Metadata Desktop Tools」は前述のtsClinical Define.xml Generator後継製品で、GitHubで公開しています。また、CDISCのナレッジを検索できる「Public Biomedical Concept Repository」もCDISC Japan User Groupの活動として提供しています。CDISC標準は公共財の側面もあるので、富士通としても可能な範囲で成果を業界にフィードバックしています。

SDTM Automationの利点

:次に、お客様が一番気になるメリットの部分について教えてください。SDTM Automationを利用することで、これまでかかっていた申請時の手間や負担が軽減できるメリットのほかにどのようなことが解決できるのでしょうか?

海老:効率化やコスト削減のほかには、データインテグリティ、人材育成に貢献できると考えています。データインテグリティの観点では、SDTM AutomationはSDTMデータ仕様からDefine-XMLとデータセットを作成することができ、データ作成の履歴もソースデータのハッシュ値付きで残ります。つまり、規制当局に提出する説明文書とデータの一貫性が取れる仕組みになっており、規制当局の査察時にトレーサビリティを証明することもできます。

人材育成の点では、CDISC標準は膨大な知識なので、長くやれば深く理解することが出来ますが、ローテーションや本人のキャリア希望等による異動で人材は流動します。初めてCDISCに触れる人にとって、SDTM Automationを使うと覚えることが少なくて済む、という点はメリットです。

:この業界では監査証跡が確認できることはほぼ必須と言えますから、申請に当たって誰がいつ作成したのかを確認できるようになっているのは重要なポイントですよね。

 

 

※1 検査項目ごとに1レコードが発生するのが縦型、各時点の複数の検査項目が1レコードに含まれるのが横型。

 

後編へ続く

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