
近年の電子的臨床アウトカム評価(eCOA)を活用した臨床試験において、従来型の紙ベースの同意取得の手続きは、現代のデジタル基準と整合しない場合があります。これは大きな摩擦やリスクの要因となり得ます。すでにデジタルデータ収集を導入している組織にとって、「紙の同意書の方が簡便」という認識は誤解を招く可能性があります。というのも、FDA、OHRP、EMAは、プロセスを効率化するために、遠隔利用を含む電子同意を長年にわたり認めてきているからです。¹,²
さらに近年では、ICH GCP E6(R3)において初めて、電子同意(eConsent)が明確に認められました。³ 規制に関する曖昧さや「紙の同意書のほうが簡単である」という認識は、実際には試験のタイムライン、データの完全性、そして患者体験に大きなコストをもたらす可能性があります。デジタルを前提とした治験において、紙の同意書は必ずしも「容易な選択肢」ではなく、むしろシステム上の弱点となり得るのです。
根本的な断絶:デジタルワークフローに紙が入り込むとき
デジタルの患者ジャーニーが「ペンとクリップボード」から始まると、試験ライフサイクル全体に非効率を生み出す根本的な断絶が発生します。本来デジタルで進むべきプロセスにアナログなステップが入り込むことで、多くの予測可能な課題が発生するのです。
手作業によるプロセス遅延
施設のスタッフは、患者にデバイスを貸与したり eCOA アプリケーションへのアクセスを許可する前に、紙の同意書が正しく完了していることを確認しなければなりません。これが被験者登録のボトルネックとなる可能性があります。規制上も、すべての試験特有の手続き(eCOAデータ収集やデバイス/アプリの提供を含む)を実施する前に、法的に有効な同意が求められます。(FDA 21 CFR Part 50.20)
業務の重複とエラー
スタッフは並行したワークフローを処理する必要があり、場合によっては紙のフォームをスキャン、アップロード、転記する作業を行わなければなりません。この手作業によるデータ再入力は作業の重複を生み、転記ミスのリスクを高め、データ品質を損なう恐れがあります。紙ベースでのモニタリングは集中管理が難しく、多くの場合、モニタリングサイクルや手動アップロードまで遅延します。一方で eConsent であれば、データをソースで正しく取得し、タイムスタンプ付き監査証跡を備えた即時の集中ダッシュボードを提供することで、これらのリスクを排除することができます。
断片化された患者体験
患者はデジタルと対面のやり取りを行き来しなければならず、一貫性のない体験を強いられることになります。これは特に、シームレスなテクノロジー活用が不可欠な分散型またはハイブリッド型試験において、患者のエンゲージメントを損なう要因となり得ます。
デジタルを基盤とした臨床試験の枠組みに紙のプロセスを組み込むことは、非効率やリスク、人為的エラーを試験に持ち込むことにつながります。
Achieving Seamless Integration: The Power of Unified eConsent and eCOA
解決策はデジタル活用を後退させることではなく、完全に統合することです。eConsent を eCOA エコシステムに直接統合することで、臨床試験全体のプロセスが一体化され、効率化されます。これは、Medidata Consent が再設計された基本理念でもあり、患者・医療機関・スポンサーのニーズに応えるため、Patient Insights Board と SiteTech Board と共同で設計されたソリューションです。Medidata Consent は、同意済み患者のメタデータを Rave EDC に自動で反映し、導入直後から活用できます。
Consent と eCOA を単一プラットフォーム上で統合することで得られるメリットは明確です:
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患者にとって:オンボーディング体験がよりシームレスになります。1つのデバイスで、1つのアプリを通じて同意と評価の両方を行えます。初回の同意取得訪問の前に、文書やマルチメディアコンテンツ、医療機関スタッフとの対話を通じて事前に情報を確認できるため、理解度とエンゲージメントが向上します。
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医療機関にとって:事務負担が大幅に軽減されます。Rave EDCとのネイティブ統合により、複数回のデータ入力が不要となります。さらに、自動バージョン管理やデジタルワークフローにより、スタッフは重複作業や書類処理ではなく患者対応に集中できるようになります。
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スポンサーおよびCROにとって:リアルタイムでのモニタリングが可能となります。デジタルのタイムスタンプ、バージョン管理、包括的な監査証跡により、試験全体を通じて同意状況を即座に把握でき、設計段階から監査対応を確保できます。
Engineered for Modern Trial Complexity
現代の Consent ソリューションは、それが支える臨床試験と同じくらい柔軟でなければなりません。
AI支援による設定により、構築作業やタイムラインを大幅に削減することが可能です。初期の事例では大幅な削減効果が示されていますが、そのインパクトは試験ごとに異なります。
本システムは複雑な試験デザインをネイティブに処理できるよう設計されています。小児試験における年齢層ごとに異なるワークフローや親/代諾者(LAR)の共同署名、多群間試験、再同意(re-consent)シナリオなどにも対応します。
さらに、本プラットフォームは厳格なグローバル規制要件に対応できるよう構築されており、必要に応じて eIDAS に準拠した署名(Qualified Trust Service Provider を通じた QES:認定電子署名を含む)をサポートします。(署名レベルは加盟国およびシステム環境により異なります。)
また、紙の署名(wet-ink signature)が避けられない場合には、ハイブリッドソリューションを利用することで、施設は紙のフォームを簡便にスキャンしてアップロードでき、すべての患者の同意状況を単一の統合システムで管理することが可能です。これにより、紙で署名した患者に再同意が必要となった場合、施設スタッフに通知される仕組みも提供されます。
シンプルさを超えて:システム的な脆弱性を克服するために
臨床試験業界は、デジタルファーストかつ分散型の未来へと進んでいます。このエコシステムにおいて、紙の同意書に依存することは「シンプルさ」を保つどころか、むしろ脆弱性を生み出す可能性があります。紙は業務効率を低下させ、規制リスクを引き起こし、せっかくのデジタル投資の価値を損なうことになりかねません。
すでに eCOA を用いたデジタルデータ収集の可能性を取り入れているのであれば、次の論理的なステップは、同意取得のプロセスを現代的なデジタルフレームワークに同期させることです。eConsent をデジタル臨床試験戦略に組み込むことは破壊的なものではなく、投資を保護し、結果への道のりを加速させる自然な拡張です。最新のイノベーションによって、施設と患者双方のユーザー体験を向上させる取り組みについて、ぜひお問い合わせください。
参考文献:
- FDA & OHRP – Electronic Informed Consent Guidance (2016)
Use of Electronic Informed Consent in Clinical Investigations – Questions & Answers
https://www.hhs.gov/ohrp/news/announcements-and-news-releases/2016/use-electronic-informed-consent-clinical-trials/index.html
- EMA – Guideline on Computerised Systems and Electronic Data in Clinical Trials (2023)
https://www.ema.europa.eu/en/documents/regulatory-procedural-guideline/guideline-computerised-systems-and-electronic-data-clinical-trials_en.pdf - ICH – GCP E6(R3) Final Guideline (Adopted January 6, 2025), including Section 2.8 (Informed Consent, remote & electronic)
https://database.ich.org/sites/default/files/ICH_E6%28R3%29_Step4_FinalGuideline_2025_0106.pdf
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