人工知能(AI)がライフサイエンス領域に革命をもたらし、今となってはかつては夢物語でしかなかった知見や効率性を臨床研究プロセス全体に提供していると言っても過言ではありません。
しかし、その真の価値を正しく理解することは決して簡単ではありません。過度な期待の中からAIの真の可能性を解きほぐす必要があります。実証されていない「〜かもしれない」「〜できるはず」といった曖昧な言葉が溢れる中で問題が見えにくくなり、これらの技術が実際にもたらしている真の進歩が覆い隠されてしまっているからです。
Medidataのチーフ・オペレーティング・アンド・ストラテジー・オフィサーであるLisa Moneymaker(リサ・マニーメイカー)と、ベテランのヘルスケア・テクノロジー・ジャーナリストであり著者でもあるLara Lewington(ララ・レウィントン)が対談し、今日の臨床試験およびより広範なヘルスケア・エコシステムにAIが与えている現実世界での影響について探求しました。
創薬
AIは膨大な量のデータを驚異的なスピードで評価し、手作業による情報評価では到底到達できない速度とスケールで知見を導き出すことができます。これは、次世代の革新的な医薬品のベースとなり得る分子を特定することで、創薬プロセスを強力に加速させる極めて大きな可能性を秘めています。
「AIを活用した創薬は容易ではありません」とLaraは語ります。「かつて誰かが私にこう言ったのを覚えています。『干し草の山から1本の針を探すようなものではない。フィールド全体から1本の針を探すようなものだ』と。実験室で全てを行う必要がなく、コンピュータ上でテストできるAIの技術は、私たちが将来達成できることに対して素晴らしい可能性を与えてくれます。」
「Medidataのシステムは年間約700億ものデータポイントを扱っています。」
– Lisa Moneymaker, Chief Operating and Strategy Officer, Medidata, Dassault Systèmes
タイムラインの短縮
創薬にAIを活用することは、研究や試験に多くの魅力的な選択肢をもたらし、未充足の医療ニーズに応える治療法や新規の治療選択肢を生み出す期待を高めます。しかし、創薬から最終製品に至るまでには、最大10年にも及ぶ隔たりがまだ存在しています。
「人々が思い浮かべるような大規模で極めて重要なフェーズ3試験に到達する前段階でも、データの統計解析や設計の見直しを行う中で、各フェーズ間には多くの無駄な時間が存在します」とLisaは述べます。
「そのプロセスを短縮するためには、時間がかかっている1つの要素だけを排除すればよいというわけではありません。様々な要素が相互に作用しており、だからこそ規制当局がAIで何が起きているか、そしてその可能性を認識するための取り組みを進めているのだと思います。」
臨床試験のプロセスが患者の安全性を最重視するのは当然のことですが、そのリスク回避の姿勢が、長期的には人々のためにならない冗長で遅いプロセスを生み出してきました。臨床研究を安全に加速させるAIの力と可能性を規制当局が認めることは、革新的な医薬品を市場に届けるまでの時間を短縮するための鍵となります。
「AIは、(膨大な臨床データの中にある)シグナルを合致させ、認識するための異なるアプローチを提供してくれます。その結果『これが成功することを示す適切なシグナルを確認できた。一緒に見直しを行い、本来進めるはずだった方向でフルスペックの試験を最後まで実行するよりも早く、次の段階へ移行できるかもしれない』と言えるようになるのです。」
「治験のデザインをより良く改善できるか?参入すべき適切な患者集団を選択できるか?など私たちが加速を目指しているプロセスは100万個にも及びます。」
– Lisa Moneymaker, Chief Operating and Strategy Officer, Medidata, Dassault Systèmes
バーチャルツインとシミュレーション
AIによって「バーチャルツイン」と呼ばれるリビングモデルを構築する能力を得ることができます。これらは、分子であれ人間であれ、システムの動的かつ計算手法に基づく表現であり、動的なデータと接続された極めて正確なデジタル上の複製です。現実世界で何かを実行に移す前に、これらを用いて実験やストレスチェックが行われます。
仮想的な事前シミュレーションによって患者の体内状態や治療に対する反応の可能性についての理解が大幅に向上し、より安全な臨床試験体験を構築するために活用されています。ですが、これはほんの始まりに過ぎません。
Lisaはこのように述べています。
「将来的にどのように反応するかを確認するために、データの一部を調整してみることができます。試験デザインそのものにおいても可能です。また、次々と舞い込む様々な試験に臨床現場の医師が、どう対応するかをモデル化する際にも適用できます。」
「今挙げたようなことすべてが、事前に行われるin-silico(コンピュータ上)の試験という世界への移行を可能にし、より高度な予測能力と確実性を実現できます。これによって短縮された時間は試験全体に還元され、パイプラインを通じてより多くの開発を推し進めることにつながります。」
AIを活用したスクリーニング
大容量データからパターンを特定するAIの能力は、創薬や治験デザインにとどまりません。個人のヘルスケアデータを探求し、標準的な健康診断やかりつけ医の診察で可能な時期よりもはるかに早い段階で、特定の疾患を発症するリスクを予測することも可能です。
「既存の健康記録を分析し、『過去5年間の検査結果に基づくと、特定疾患の症状が出たり罹患したりする確率が80%ある』と提示できる驚異的なスクリーニングツールが近年多く登場しています」とLisaは語ります。
「誰が、いつ、どのようなリスクに晒されているかについての理解が深まるにつれ、より適切なスクリーニングが可能になります。テクノロジーがそれを容易にしてくれます。特にハイリスクグループに対してスクリーニングを行うことが重要だと考えています。」とLaraは付け加えます。
メディカルグレードのセンサーを搭載したものが増えているウェアラブル端末の普及は、AIの予測能力と結びつき、集団レベルおよび個人レベルでの健康の理解と管理のあり方を変化させています。
自動化と患者ケア
AIは究極のツールであり、どのようなツールであれ正しく使用されれば業務をより効率化し、私たちが真に優先したいタスクのために多くの時間をもたらしてくれます。
「患者と対話する際、チャットエージェントの方が医師よりも共感的かという議論が多くなされています。」とLisaは言います。「これは、医師の時間が患者からいかに奪われているかを如実に物語っていると思います。医師の手により多くのチャットボットを持たせるくらいなら、医師を再び患者の目の前に戻す支援をしたいと考えています。」
Lisaは、AIの民主化が自動化と効率化のための多くのきっかけとなり、医療従事者や医療機関の専門家が患者とその体験に注意を向け、そこに集中できる機会を提供すると信じています。
「単一のAI技術だけで試験全体を変革するわけではありません。多くの異なる業務がより効率的かつ高品質になり、ルーティンワークの一部がAIエージェントによって処理されることで、人々が本来の能力を最大限に発揮して仕事に臨めるようになることで変わっていくのです。能力を解放すればスピードが解放され、それが最終的には、これまで以上に安全で有効性の高い新しい治療法を患者に届けることにつながると強く信じています。」とLisaは続けます。
これらのテーマや、AIが臨床研究を変化させているその他の多くの方法についてより深く知りたい方は、LisaとLaraの会話全文動画をご覧いただき、9月10日に開催されるClinical Leaders ExpoでのLisaのセッションをチェックしてください。
Everest Groupとの共同調査を通じた、臨床研究におけるAIの現状についてはこちらからご覧いただけます。
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