
臨床試験において、施設は常に中心的な存在です。しかし現在の限られたリソースとますます複雑化するプロトコルのもとでは、より強固なパートナーシップと十分なサポートが求められています。とはいえ、それは施設スタッフに可能な限り多くのテクノロジーやツールを押し付けることを意味するわけではありません。むしろ重要なのは、患者とのコミュニケーションなど本当に重要な業務により多くの時間を割き、データ入力のような繰り返し可能かつ自動化できる業務に費やす時間を減らせるよう、戦略的に力を与えることです。
人工知能(AI)は、この状況を大きく変えつつあります。資金や人員の不足が常態化している制約の多い環境において、サイトが成功するために必要なものをすべて備えることは、かつてないほど重要になっています。貴重な時間を解放し、効率・品質・スピードを大幅に向上させることで、そのメリットは明確であり、今後も機能の進化とともにさらに拡大していくことが期待されます。
ワークフロー開発の合理化
AIはすでに、事務的な負担を軽減し、より高い運用の柔軟性を実現する役割を果たし始めています。スケジュール調整、カレンダー管理、データ入力など時間を要する作業はAIツールに任せることで、医療従事者は研究の中でもより重要で付加価値の高い業務に集中できるようになります。
さらに、eSource(電子原資料)の作成といった複雑なタスクにおいても、AI搭載のソリューションはプロトコルを読み込み、専門家が洗練・改良できる下書きを生成します。これにより、一から作成する必要がなくなります。一歩進んだ活用としては、AIが治験の運用ワークフローの特定を支援することも可能です。
従来、このワークフローを構築することは、完成図が描かれていないパズルの箱を渡されるようなものでした。施設スタッフは、プロトコル、EDCマニュアル、手順書などの「ピース」を一つずつ確認し、それが何を示しているのか、どう組み合わせればよいのかを把握する必要がありました。
AIツールは、この状況を変えることができます。角のピース、縁のピース、中央部分といった具合にパズルを整理・分類し、全体の輪郭と論理的な進め方を明確にすることで、サイトはより迅速かつ自信を持って完成図に到達できるようになるのです。
現在、施設スタッフは各治験で必要となる運用要件を理解するために、資料の確認に何時間も費やしています。AI搭載のツールを活用すれば、プロトコルやEDCマニュアル、その他の関連資料を確認し、それらをもとに想定されるワークフローのたたき台を提示することで、この時間的負担を大幅に軽減できる可能性があります。
– Robin Douglas, VP, Research Site Engagement, Medidata
より迅速で効率的な被験者募集
治験の参加者を集めるのは、とても大きな課題です。特に、独立型の治験施設(私設の治験実施施設)ではその負担が大きくなります。AIを使えば、あらかじめ決められた参加条件(適格基準)や除外条件と、事前スクリーニング用の質問票、治験管理システム(CTMS)、電子原資料(eSource)、診療記録などの情報を照らし合わせて、参加できる可能性が高い人のリストを作ることができます。これにより、最初から条件に合わない人との面談や検査を減らすことができ、時間や労力を大幅に節約できます。
これは被験者にとっても直接的なメリットがあります。AIが適格でない被験者との事前スクリーニングを減らせれば、被験者と施設の双方が貴重な時間を取り戻せ、追加の交通費や関係者全員にとっての不快な体験を回避できます。
また、コスト削減の側面もあります。スポンサーは通常、補償対象となる事前スクリーニング回数(すなわちスクリーニング可能な患者数)に上限を設けています。一部の治験では、1人の適格患者にたどり着くまでに数百人と話をしなければならない場合があり、その時間が補償されなければ、施設自体がその治験に参加できなくなる可能性もあります。
私たちは、治験登録につながる可能性が最も高く、正確で質の高い候補患者情報を提供できます。
これにより、すべての関係者が恩恵を受けます。施設はその段階に至るまでのリソースをより少なく抑えられ、コンバージョン率(登録率)の向上によって、スポンサーが定めた上限内でより多くの患者を獲得できる可能性が高まり、さらに費やした時間に対して補償を受けることができます。
– Robin Douglas, VP, Research Site Engagement, Medidata
持続可能性と導入の壁の克服
.導入のスピードは依然として大きな課題です。施設は効率性を求めており、使用するさまざまなツールが相互に連携することを必要としています。単一のログインでアクセスできる統合プラットフォームの力は計り知れません。
施設が持つあらゆるツールが互いに情報をやり取りし、シームレスに連動することで、業務体験は飛躍的に効率化し、より強力なものになります。
施設は、スポンサーから使用を求められるテクノロジーやベンダーの数にますます圧倒されています。日常的に20以上のシステムを扱っている施設も多く、この状況は持続可能とは言えません。この技術的負担を軽減するために、AI搭載ツールは不可欠です。それでもなお、「AIは人間の知識や専門性を完全に置き換えるものではなく、パートナーである」という認識を持たせるため、価値を継続的に実証し、根強い不信感を和らげることが必要です。
メディデータのSite Insights Programのような取り組みは、治験実施施設とのよりオープンな対話を促進し、最終的に施設が使用することになるツールの設計段階で、事前に懸念点を把握・対処できるようにします。これにより、課題を解決しつつ、初期段階から信頼関係を築くことができるAI搭載ソリューションが実現します。施設が求めているのは、単なるサポートではありません。点と点をつなぎ、目の前の障害を取り除く新たな方法を提示できるパートナーなのです。
よりコンプライアンスを重視した未来
将来的に、治験実施施設におけるAI活用の可能性として、能動的なコンプライアンス監視が考えられます。具体的には、患者が服薬や治療を守らなくなる可能性を自動アラートで通知し、施設スタッフが効率的に介入できるようにする仕組みです。こうした監視がスタッフの他業務中もバックグラウンドで行われれば、大幅な時間短縮が可能になり、見落とされていたデータ異常も過去のものとなるでしょう。
さらに、ライブサポートもより能動的に進化する可能性があります。施設のリアルタイムなニーズに応答したり、プロトコル設計時に施設の実施可能性シナリオをシミュレーションして、リスクを事前に可視化するAIエージェントなどがその例です。
インテリジェント・アシスタント
電子カルテ(EHR)システムでは、データは「構造化」と「非構造化」という2つの形で記録されます。
構造化されたチャートやフォームには、個別のフィールドがあります。そこには、検査室やデバイスから自動生成されたデータ、あるいは医師が生成したデータ(例:診察時に測定した血圧が機器から直接システムに入力されるケース)などが含まれます。構造化チャートのデータは現在の技術で処理でき、EHRシステムを通じて施設スタッフが患者に関する関連情報(服薬中の薬の一覧など)を呼び出すことが可能です。Rave Companionのようなツールは、こうした情報をスタッフに提示し、取り込みたいデータを選択できるようにします。
一方、非構造化情報は、診察中に医師が書き込むメモや所見リストのような形で存在します。患者の体調やそのときの状況に関する記述などが含まれ、試験に関連する重要情報を見極めるためには文脈理解が必要となるため、現行技術では参照が難しい場合があります。
情報が外部システムにどのように記録されていようと(構造化か非構造化かを問わず)、データは確かに存在します。
施設スタッフが抱く疑問の答えは、すでにそのデータの中にあるのです。問題は、その答えを探し出し、文脈を理解し、試験に関連する内容を特定する作業に時間と労力がかかることです。AIはまさに、この部分で大きな可能性を秘めています。
今後、EDCやEHRツールは、単にスタッフが必要な情報を探し出し、正しい情報を選択するのを助けるだけでなく、どのデータを取り込むべきかを事前に提案し、全体像を踏まえた上で質問に答える、完全なインテリジェント・データ入力アシスタントへと進化していく可能性があります。
従来のようにツールが質問を提示し、スタッフがその中から答えを選ぶのではなく、入力形式に関係なくすべてのデータを並行して評価し、直接提案できるほど賢くなる未来が想定されます。
AIが点と点をつなぐ作業を担えるようになれば、人間は行動に移す時間や患者対応といった、より重要な業務に貴重な時間を割けるようになります。
これらの現在および将来の進歩は、単なる効率化にとどまらず、逼迫した環境における持続可能性を確保し、施設が生き延びるだけでなく、真に成長・進化するための助けとなるのです。
これらのメリットを享受しているのは施設だけではありません。
AIが患者にどのような影響を与えているのか、そしてMedidataの「AI Everywhere」アプローチについて詳しくご覧ください。
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