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【イベントレポート】eConsent国際シンポジウムにて講演いたしました

2023-03-22 - 4 min read
【イベントレポート】eConsent国際シンポジウムにて講演いたしました

去る3月3日、国立国際医療研究センター主催、AMED協賛、JPMA後援にてeConsent国際シンポジウムが開催されました。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により、臨床試験をめぐる環境は急速に進化しており、近い将来DCT(Decentralized Clinical Trial)が実現すると広く考えられています。

なかでも eConsentは、被験者の臨床試験への理解を高めると同時に、原理的にはリモート・インフォームドコンセントを実施可能とする極めて重要なコンポーネントであると考えられ、パンデミックを機により業界の注目が集まっています。リモート対応だけでなく、患者の理解促進や施設での版管理、同意進捗管理の可視化など、様々なメリットがあるとされ欧米では導入が先行しているニュースもあるものの、国内ではまだ導入への一歩を踏み出したばかりという状況です。

そこで今回のシンポジウムでは、現状をより正確に把握し、国内と海外におけるeConsent の現状と課題を共有し、今後取り組むべき方向性について議論することを目的として各ステークホルダーが集結しました。

ありがたいことに、メディデータも本シンポジウムへお声がけをいただき、テックベンダーの立場からグローバルでの導入状況や欧米と比較した日本特有の課題などについて講演いたしました。

 

パネルディスカッションを含む三部構成で、一部となる「Session 1: eConsentにおける共通認識」では、eConsentとは何かという説明の他、メリットや注目されている背景、実際の画面などを紹介し、文字通り共通認識とされるべきeConsentに関する基礎知識が紹介されました。

 

Session 1

国立国際医療研究センター 友次様のセッションの中では、4,000名の患者を対象としたICF(同意説明文書)に対する理解に関してのメタアナリシスの結果が紹介されました。治験そのものへの理解や、いつでも治験参加を中止できることについては一定の理解があった一方、有害事象発生の可能性やランダマイゼーション(無作為化割付)が行われること、比較対象試験が基本となるためプラセボ群が存在すること、ランダマイゼーションについては治験責任医師に対してもブラインド(盲検)で行われることなどは十分に知られていないことがわかりました。

DCTやeConsentをテーマにしたセミナーはここ数年で多く開催されているものの、こういった理解度の具体的な考察についてはなかったように思いますし、ご参加の方々だけでなく私たち講演者側にとっても大変興味深い内容でした。

 

Session 2

続くSession 2では、「これまでのeConsentとこれからの課題」をテーマに、自社試験にてすでにeConsent導入のある中外製薬より高橋 真実様、CROとしてのご経験を生かしたコンサルティングサービスを提供するRemedy & CompanyよりRamya Krishnaa Mokkapati様が講演されました。

中外製薬様のセッションでは同社のeConsent展開のロードマップと導入状況を中心に、実際に導入した経験を経て得られたLesson & Learnがあり、特に被験者および施設からのフィードバックをもとに、導入のためのプレイブックを準備されているとのお話しがあり、今後も積極的にeConsentを活用していくことがうかがえました。

中外製薬様の講演で特に印象に残ったのは、「一口にeConsentといってもその導入のオプションは様々で、自宅であらかじめICFに目を通した後来院し現地で同意をするパターンや、同意説明を施設で聞いたあと、自宅からリモート同意をするパターン、フルリモートのパターンなどがある」、と説明した上で、「ゆくゆくは被験者の希望に応じてオプション設定できるようなオペレーションを実現したい」という高橋様のコメントでした。

DXが叫ばれる中、そのメリットと価値のひとつは「選択肢を持てる」ことだと私たちは考えています。

リモートワークをせざるを得なかったパンデミック禍を経て、出社するのか、自宅で作業をするのか、その時々やその人々の働き方に合った選択肢がある、ということがメリットになっています。

このメリットは最終的には人々のQoL(Quolity of Life)向上につながるもので、自分たちに合った働き方を「選択する」ことによってワークライフバランスを保ち、さらには生活の質が向上がするといえます。実際、この予期せぬ本来的な働き方改革によって、実感値としてそれを感じている方も多いのではないでしょうか。

高橋様のコメントはまさしくこれで、最終的な臨床試験における患者さんのQoLの向上につながるポイントなのではないかと思います。患者さんに合ったやり方、患者さんが希望するやり方で選択できる、ということが試験に参加する方々のメリットであり、臨床開発におけるDXの意義の一つになると感じます。

二部の最後として、メディデータより講演をさせていただき、当セッション内では昨年実施したグローバルでの調査結果をもとに欧米でのeConesent導入状況の紹介や、eConsentだけでなくDCTを推進していくことの必要性についてご紹介しました。

すでに多数の試験で導入され、市民権を得たと言っても過言ではないeCOA/ePROに続く第二のソリューションとして、eConsentは現在業界内で注目を集めていますが、一方で、メディデータとしてはあくまでもDCTを構成するいちソリューションとして考えています。

多くの製薬企業様が実現を目指すデジタルをベースとした臨床試験の実現にはテクノロジーは欠かせないものであり、より効率的かつ質の高い試験を実施していくためにはDCTが不可欠です。より良い試験の実現に向けた大きな流れのなかでの1ステップとしてeConsentがあり、メディデータはそのステップのご支援、ひいてはプラットフォームによるDCT全体のご支援をさせていただきたいと思っています。

 

Session 3

三部l構成の最後は講演者によるパネルディスカッションで、eConsentのメリットについてどう考えているか、日本での導入を阻む要因はなんだと考えられるか、といった問いをもとに、活発なディスカッションが行われました。

施設への啓発や働きかけ、ガイドラインの未整備、海外とのIRBの違いなど様々な視点から改めて課題が浮き彫りとなり、この課題を乗り越えるためのアイデアもあわせてシェアされました。

加えて、オンライン上でも多くのご質問をいただき、純粋な情報収集の場としてだけでなく、実現に向けた具体的なアクションのための質疑応答のような側面も見られ、非常に充実したディスカッションとなりました。

今回シンポジウムと称して各ステークホルダーが集まり、経験や学び、課題感などそれぞれの視点から語られたことで、eConentの理解がより深いものになっただけでなく、国内での導入に向けた大きなきっかけとなったのではないかと思います。

欧米に遅れをとっているDCT導入ですが、業界全体でのノウハウや知識・経験の共有を通して、日本での導入を加速し、真に「患者中心」を実現できる試験のあり方を模索していければと思います。

 

なお、メディデータのセッション内でご紹介したデータの出典元となる一部のレポートについては下記にて全文をご覧いただけます。ご興味のある方はぜひご覧ください。

European Industry Research Report: The Future of Clinical Trials

 

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