医薬品や医療機器の開発における厳しい現実は、新規治療薬の大部分が市場に到達することなく消えていくという点にあります。非がん領域において、第I相試験から承認申請まで漕ぎ着ける治験薬は10個に1個にも満たず、がん領域ではその確率はさらに下がり、20個に1個近くまで落ち込みます。さらに運用のハードルも高く、プロトコルの複雑化が一因となり、80%以上の治験が当初の被験者の組み入れ目標を達成できていないのが現状です。
これらの困難な課題に対処するため、AIは臨床研究のオペレーティングモデルを再定義し、効率性と確実性を向上させる道筋を示しています。36,000件以上の過去の試験、1,100万人以上の患者、そして700億件にのぼるデータポイントという、類を見ない臨床試験データを活用した当社のAIは、初期のサイエンティフィックデザインからオペレーションの実行に至るまで、治験の迅速な開始~完了に特化して構築されています。
このアプローチは、①よりスマートなプロトコル設計、②試験の立ち上げの合理化と、最高のパフォーマンスを引き出す実行管理という大きく2つの柱で構成されています。
臨床試験の「エラー」を終わらせる:AIによるプロトコル確実性の担保
AIは臨床試験の設計と計画に変革をもたらし、科学的な厳密さと運用上の実現可能性に関する極めて重要なインサイトを提供します。
サイエンティフィックデザインの強化
AIと統計的手法により、症例数の削減と、標準的な対照群の必要性を大幅に減らすことが可能になります。
- バーチャルツインを用いた共変量調整(CAVT): AIと統計アルゴリズムを用いて、患者のベースライン特性を単一の「超共変」に統合します。このバーチャルツインモデルに合わせて調整を行うことで、説明のつかないばらつきを考慮できるようになり、必要なサンプルサイズを削減できます。例えば、通常1群あたり100名を必要とするアルツハイマー病の第II相試験において、CAVTを用いれば1群あたり約85名まで現実的に削減可能です。FDAやEMAなどの規制当局も、このアプローチに寛容になりつつあります。
- 合成対照群(SCA)および外部対照(External Controls): 過去の治験の患者レベルデータを使用して作成されます。傾向スコアモデルを用いて、合成対照群と実薬群の間のベースライン構成を調整します。検証研究では、適切にマッチングされた場合、全生存期間(OS)などのアウトカムをランダム化比較試験(RCT)と同等の精度で推定できることが示されています。規制当局は、特に重篤で適切な標準治療が存在しない疾患において、外部対照群の受け入れに前向きな姿勢を見せています。
運用プロトコルの最適化
This enables:運用面での変革の核となるのは、プロトコルを単なる文書(WordやPDF)から「デジタル資産」へと変換することです。これにより、以下のことが可能になります。
- ベンチマーキングと複雑性の定量化: AIにより、新規プロトコルを業界の関連コホートと比較し、適格性基準やエンドポイントを最適化できます。また、「患者負担指数(Patient Burden Index)」などの指標を通じてプロトコルの複雑さを定量化します。データによると、患者負担指数が高いほど組み入れ率が低下し、脱落率(ドロップアウト)が上昇することが明らかになっています。
- 財務計画の自動化: デジタル化されたプロトコルにより、SOAの自動取り込みと標準化が可能になります。各手順に標準コード(CPTライブラリなど)が割り当てられるため、予算案に中央値を自動反映できます。これにより、従来予算作成に費やされていた時間の約70%を削減できます。
AIを活用した試験の立ち上げと実行で最高のパフォーマンスを引き出す
変革の第2段階は、システムが断片化されているためにフィードバックループが遅れ、遅延が生じがちな「治験の実行フェーズ」における運用の複雑さとコスト増大への対処です。
スタディ・スタートアップ(SSU)の加速
AIソリューションは、最適な施設の選定を迅速化し、基礎的なタスクを自動化します。
- 予測的施設選定: AIモデルが試験の特性(適応症、フェーズ、疾患の重症度)を入力データとして、過去および現在のパフォーマンスに基づき、その試験に最適な施設を推奨します。パフォーマンスが高いと予測された施設は、低い施設に比べて平均で5倍速く組み入れを行います。これらの施設を優先的に配置することで、累積組み入れ期間を平均3ヶ月短縮でき、業界標準と比較して最大37%速い組み入れ率を達成することが可能です。
- データベース構築の自動化: AIが、各種フォーム、エディットチェック、テストケースを含むEDCの構築を自動化します。「ワンクリック・スタディ・ビルド」の実現に向け、構築時間を75%改善することを見込んでいます。通常12〜16週間かかるデータベース構築プロセスを、わずか3〜4週間に短縮することが期待されます。
実行フェーズにおける継続的な最適化
実行フェーズでは、AIがリアルタイムの監視と主要な運用ワークフローの自動化を担います。
- 動的な組み入れ予測: 過去のコホート実績に基づいたベースライン予測を立て、リアルタイムの実績に基づいて動的に更新します。これにより、チームは実効性のあるインサイトを得て、プロアクティブに軌道修正を行うことができます。
- 支払業務の自動化: 臨床データと運用データ(EDCやeCOAからのトリガー)を統合し、施設や患者への支払い(謝礼、請求、経費精算)の計算を自動化します。処理時間とエラーを削減し、グローバルな税計算や国別の請求規制にも対応します。
- モニタリングの効率化: AIは、モニタリングワークフローを合理化することでCRAの効率を高めます。通知書やレポートのeTMFへの自動ファイリングを含む自動化により、施設モニタリングに関連する事務作業時間を40%削減します。
リアクティブからプロアクティブへ
このようにAIを活用して、合成対照群の生成やプロトコルの業界標準ベンチマーキングを行い、臨床戦略のリスクを低減していくことができます。これにより、実現可能性を最適化し、患者負担を軽減できます。さらに、予算作成の自動化や動的な組み入れ予測を通じて運用効率を変革し、高パフォーマンスな施設を特定することで、治験のスタートアップと実行を大幅に加速させることが可能です。
詳細については、オンデマンド・ウェビナーをぜひご視聴ください。
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